エステイト日記

不動産鑑定士の説明責任と裁判鑑定の重要ポイント

不動産鑑定士の説明責任と裁判鑑定の重要ポイント

 

不動産の鑑定評価は
不動産の客観的な交換価値である時価を把握することを目的としていますが、不動産の価格や賃料に関する当事者間の認識にずれがあり、裁判に至った場合、弁護士の先生の証拠資料や裁判所の判決の根拠として鑑定評価が必要となります。

 

客観的な交換価値としての時価は、不動産鑑定士が複眼的な視点で測ることを原則としており、鑑定評価基準により体系的に整理されており、これらの価値を測る物差しは「手法」と呼ばれています。そして、不動産の価格を求める基本的な手法は、取引事例比較法、収益還元法、原価法に大別されています。

 

 

取引事例比較法は
評価の対象となる不動産と比較できる実際に市場で取引のあった事例を収集し選択し、適切な補修正を加味することで価格を求める手法です。

 

評価の対象となる土地と似た土地について取引がある場合、この取引事例の取引価格に、取引時点から価格を知りたい時点までの価格水準の変動率を加味したり、形状にクセがある場合は、相応に価格に修正します。

 

仮に、3年前に同一町内で同規模の土地が5つ取引され、その中庸値が5000万円であり、3年間で価格が5パーセント上昇していることが明らかで、形状がいびつであることより10%減額することが妥当と判断される場合、取引事例比較法による価格は5000万円×105%(時点修正)×90%(個別補正)≒4725万円と求めます。

 

不動産鑑定士としては、いかに対象不動産と比較可能であると言える事例を集めることができるか、いかに補修正を適切に行うことができるかが腕の見せ所です。

 

 

収益還元法は

評価の対象となる不動産がどれだけ稼ぐことに長けているかを測る手法です。
収益還元法は、不動産投資家になりきって考えてみる思考方法とも言えそうです。

 

多くの人が比較的容易に取引できる市場が形成されている株などの金融商品であれば、日々、その価格も変わるため、配当に対する利回りも随時、変わります。収益還元法は、家賃に対する合理的な利回りを見出し、その利回りで割り戻して価格を求めます。

 

例えば年間250万円の家賃が入ってくる共同住宅があり、その家賃に対する利回りは5%が合理的と考えられる場合、250万円÷5%=5000万円と求めます。(実際の収益還元法では、粗利益から、適切な必要諸経費を控除した純賃料を、純賃料に対する利回りで割り戻して求めるため、より複雑になりますが、説明力の高い方法で収益価格を求めます。)

 

実物不動産は、株のように、日々の利回りが明示されていないため、適切で説得力のある利回りをいかに算定するかが不動産鑑定士の腕の見せ所です。

 

 

 

原価法は
評価の対象となる不動産を取得するためのコストに着目する手法です。

 

この手法では、土地をいくらで購入し、加えて、建物を建てるのにどれだけの費用がかかるのか合理的に算定することとなるのですが、建物については、現時点で調達した場合の価格を一度求めた後、築年数が経過している場合は、経年分に応じて減価することとしています。

 

例えば今から遡ること5年前の2021年に建てた建物を、仮に現在(2026年)、新築で建てると5,000万円かかることがわかっていたとしても、5年分の経年でそのうち1,000万円の価値が減価していると判断し、結論を4,000万円とするといった感じです。

 

土地については、建物のように調達コストを見積的に算定することは難しいので、取引事例比較法を使い、比較できる実際に市場で取引のあった事例を集め、適切に補修正を加味することで価格を求めることがほとんどです。

 

取引事例比較法により土地の価格が3000万円と判断され、建物が4,000万円であれば、その合計である7,000万円が積算価格となります。

 

 

 

不動産鑑定士は、評価の対象となる不動産の特質を見極め、どの手法が物差しとして相性が良くて説得力があるのか考慮して、時価を求めます。料理によって包丁を持ち換えるように、一番良いと思う手法を選び、他の手法で、価格の妥当性を検証する感じです。

 

不動産鑑定評価書は、不動産鑑定評価基準に則って作成しますが、不動産鑑定士が作る書面であるため、作る人が変われば金額が変わってしまう可能性を完全には排除できません。先ほどの例で言えば、料理が美味しいかどうかは、その食材の良し悪しや、料理を任された料理人の腕の良し悪しで決まることと似ていると思います。

 

価格が一致しないとしても、その理由が、基本調査を怠り、事実を見逃していることによる場合は問題です。鑑定評価も、料理の良し悪しではありませんが、食材にあたる根拠事実を捉える力の如何によって品質にも差が出ます。

 

弊社では、不動産鑑定評価書は、いかに読み手に納得させることのできる鑑定評価書であるかでその値打ちが決まると考えておりますが、裁判では、裁判官に対してしっかりと説明責任を果たすことのできる鑑定評価であるかどうかが重要です。

 

なぜならば、裁判においては、自ら調査を行うことのできない裁判官に対して、どのような心証を抱いてもらうかが、結果に重要な影響を及ぼすからです。

 

 

 

権利関係が複雑になっている不動産に関する鑑定評価が必要になってしまった方はぜひ、ご相談下さい。

 

(文責:長谷川大輔)

 

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