エステイト日記

賃料に関する裁判鑑定の重要ポイント

賃料に関する裁判鑑定の重要ポイント

 

 

前回、裁判における不動産の鑑定評価において、不動産の鑑定評価の目的は、不動産の客観的な交換価値である時価を見つけることにあるとお話しましたが、不動産の鑑定評価では、立地や評価対象の種類により、作成するための難易度に差があります。従って、鑑定評価書を作ることが難しい案件では、いかにして説得力のある鑑定評価書を作ることができるか知恵を絞らなければならないこともあります。

 

中でも、継続賃料の鑑定評価は、説得力の高い鑑定評価書を作成するための難易度が高い部類に入ります。

まず、賃料の鑑定評価を行う場合、賃料は、大きく二種類に分かれます。

 

 

一つ目は

新規賃料といわれる賃料です。収益不動産を所有されている方であればわかり良いかもしれませんが、共同住宅の一室で退去が発生して空家となった場合、その部屋をいくらで貸し出せば良いのかという発想に立って求める賃料です。

 

不動産の価格を求める方法で、取引事例比較法がありますが、賃料においても、同様に、周辺で同様の部屋が決まった時の条件をベースに合理的な賃料を求める方法です。この際に注意しないといけないのは、部屋が中間部屋か角部屋か、階層は違うか、特にエレベーターのない4階以上のお部屋は、契約を決めるのに苦労し、強気の賃料も出しにくいです。

 

部屋の間取りや規模も影響してきます。若い二人暮らしようの40㎡のお部屋の単価と、単身者が借りる20㎡前後のお部屋の単価は、異なったりするので、他に事例がない限りはできるだけ採用を控えたいと考えます。

 

これらの注意点を十分に把握は、実際に不動産を借りたい人の物件を案内した者であれば、イメージしやすいと思います。

 

 

二つ目は

継続賃料と言われる賃料です。これは、過去に一度契約している賃料について、今、改めて、適正な賃料はいくらになるのかを考える点で、前者の新規賃料と異なります。私が関わることになった賃料に関する裁判でいうと、建物を借りて事業を行っていたところ、建物の所有者が変わり、大幅な賃料増額を迫られたケースや、長年、契約賃料を含む契約関係に不満があり、賃料改定の話し合いを行ってみたものの、交渉が決裂してしまい裁判に発展したというケースが多いです。

 

不動産投資家に向けて、まだまだ賃料アップが見込める物件であると宣伝する収益不動産の広告を見たことがありますが、オーナーチェンジ(収益用不動産の所有者が変更すること)を機会に、契約が改まり、賃料を増額して良いというものではありませんし、どんな時でも賃料増額を請求することのできる権利があるわけでもありません。

 

賃貸借に関する一般的な決まりは民法によって定められていますが、不動産の賃貸借については、借地借家法という特別法が設けられ、民法に優先して、ルールの適用がなされます。

 

借地借家法によると、賃料増額請求権を使う事ができる場合は、賃料を増額しないという特約がないことが前提条件となりますが、次いで、①近傍同種の賃料が上がっている、②土地・建物の価格が上がっている、③固定資産税・都市計画税が上がっている、ことが要件となり、その結果賃料が「不相当」と判断された時に、限られます。

 

 

この賃料の不相当性は、過去に蓄積された裁判例により、不相当性を分析するための2つの重要な視点が生み出されました。

この2つの重要な視点は、それぞれ、「事情変更の原則」「諸般の原則」と呼ばれています。

 

 

一度合意した状況から、どの程度、事情が変わっているかを拾い出す視点が「事情変更の原則」です。合意時点では存在していなかったが、その後、新駅がすぐ近くにできた場合、合意時点の後、地震が起きて、街並が変わり、近くに大きなスーパーマーケットができた場合等が挙げられます。

 

 

「諸般の事情」は、合意がなされた契約の中に経済合理性にはなじまない特別な事情がなかったかを確認することに目を向ける視点です。

 

貸主が、キリスト教信者で、借主が、キリスト教の神父さんであり、宗教上の理由から、信者である貸主が、借主である神父さんに、長らく相場の半額程度で貸していたが、売却などをきっかけに、キリスト教とは全く関係のない人にオーナーが変わってしまい、相場程度の賃料に戻したいというケース等が該当します。

 

貸物件として募集を行ったものの、なかなか借手がつかないので、納得できるものではないが、賃料額を下げて再募集を行ったところ、借手がついたという場合に、貸し手が経済合理性に反して安く貸していたと主張するケースを経験したことがあります。しかし、この場合、賃料を下げて貸したという事実は、賃料を下げることで市場メカニズムが働いて契約に至ったと考えられ、経済合理性の結果と考えられるため、経済合理性に反する特殊性による諸般の事情には該当しませんでした。

 

 

不動産の賃料額は、不動産の賃貸借に関する当事者の約束のエッセンスが詰まっているのですが、ある種の賃貸借契約では、「あなただから信用して私の不動産を貸します」と言った貸主借主の一定の信頼関係をベースに形成されるものもあり、不動産の価格の形成より、要素が複雑に関係しあって形成されている場合があるように思えます。

 

また、賃料に関する鑑定評価基準は、過去数度、改正がなされており、「事情変更の原則」「諸般の原則」が重視され出したのは、平成26年の鑑定評価基準改正からです。この賃料に関係する要因は、重要であり、賃料に大きな影響を及ぼすものでありながら、改正で追加されたものであるため、不動産鑑定士によって理解度に差が出やすい部分とも言えます。

 

従って、冒頭に述べたように、継続賃料に関する案件は、説得力の高い鑑定評価書を作成するための難易度が高く、不動産鑑定士の理解度により判断とその結果に差が生じやすい案件となります。

 

 

弊社は、日頃から街の不動産屋として、収益不動産のオーナー様から部屋貸の相談を受けております。そして、空室が出た際には、工務店の方の協力を得て、原状回復工事を行いつつ、近畿レインズ等で賃料相場を把握して貸室の募集業務を行っております。

 

それゆえ、不動産の賃料鑑定においては、実務で、どこが勘所になりうるのかを実体験を踏まえながら、十分に分析することができ、依頼者及び弁護士の先生に説得力の高い鑑定評価書を提供することができます。

 

弊社では、不動産の賃貸業務と不動産の鑑定評価の両方の業務を手掛けておりますので、もし、ご自身がお持ちの収益用不動産のことで心配なことがあるようでしたら、総合的な目線から問題解決に臨みますので、是非、ご相談頂ければと思います。

 

(文責:長谷川大輔)

 

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