エステイト日記

夏の研修旅行 2025

この夏、前から行きたかった長野県の「かんてんぱぱガーデン」へ行ってきました。かんてんぱぱガーデンとは、寒天製品を製造する伊那食品工業株式会社が本社敷地を公園化し整備した施設で、観光客が訪れる場所ともなっています。

2009年執筆当時に同社の社長であられた塚越寛氏が著された『リストラなしの「年輪経営」いい会社は「遠きをはかり」ゆっくり成長』は、弊社所長の長谷川大輔の愛読書で、半世紀にわたり増収増益を続けた伊那食品の経営の心構えが書かれています。

この本のまえがきでは、「社員を幸せにするような会社をつくり、それを通じて社会に貢献する」ことを経営の「本来あるべき姿」と説いています。

その理念が形となったであろうかんてんぱぱガーデンに長年期待を寄せ、ようやく出かけることができました。

 

 

 

伊那食品の自社製品の売店では、同社の主力製品である寒天を使ったゼリーが試食でき、買い物すると思いがけずオマケがもらえて、期待どおりの「よい会社」ぶりでした。

既に行ったことがある千里のかんてんぱぱショップをスケールアップした感じで納得感がありました。展示の字も見やすくユニバーサルデザインという言葉が浮かびました。

また、寒天レストランのさつき亭も、眺めの良い位置に配した窓や、トイレに飾られた花、トイレから戻る通り道の向かいの壁にぴったりサイズな鏡が設置されていることなど、心配りが隅々に行き届いた気持ちの良い場所でした。

 

ただ、行ってみて百聞は一見に如かずだなと思ったのは、全国のセンスの良い食品や雑貨を売るモンテリーナという大きなお店が2023年にできていたことです。

商品点数がとても多く、また、全国各地の品々が並び、ロスの発生を含め在庫管理がかなり大変そうに見えました。

また、塚越氏が惚れ込んだ植物細密画の常設ギャラリー以外に、複数の作家の写真・絵画を紹介するホールもあって、それらギャラリー群がかなり大規模だったことです。

建築費だけでも相当なコストだと思いました。

 

 

伊那食品工業の「いい会社」をつくるための十箇条のうちに、「メセナ活動のボランティア等の社会貢献を行う」という条文もあり、芸術面に会社のお金を割くことを是としています。
このような企業メセナ活動と、社員の人件費のバランスはどうとっていくのが最適解なのか、なかなか難しいことのように思われました。

 

また、かんてんぱぱガーデンの植栽の手入れも、同書によると、社員の方々が始業の30分前に自発的に会社に来ておこなっているとのことですが、共働きも増えて万事余裕のない昨今、このあたりの対応も、本の書かれた2009年当時と変わりがないのか、社員の方々から実状をうかがってみたいような気がいたしました。

また、塚越寛氏は現在同社の最高顧問になっておられますが、後を継がれ社長となられた方のお話も聞いてみたいように思います。

 

このような、本からだけでは浮かんでこない疑問について思いを巡らせながら、その後、帰り道に何の気なしに寄った鈴鹿サーキットパークでも学びがありました。

鈴鹿サーキットパークへ行くのは小学校の修学旅行ぶりなため、単に遊園地としてしか意識していなかったのですが、実は、小さい子供のうちから、乗り物を操る楽しさに目覚めさせることを目的とした場所へと進化していたのでした。

ごく子供向きの可愛らしい乗り物でさえ、前進とストップのレバーや、上下を指示するレバーがついていて、意のままに操る楽しさや視界の変化を味わうことができます。

また、今回は乗ることはできませんでしたが、世界でここだけにしかないというバイク型のコースターや、大人でも満点をとるのが難しいという交通ルールを学べるゴーカートがあり、鈴鹿サーキットパークの母体であるホンダの運転の楽しさと正しい交通ルールを子供のうちから知ってほしいという深謀遠慮を感じずにはおれません。

 

単なる遊園地ではなく、ここは未来のバイカー、ドライバーを育てる圃場だと、妙にホンダの本気に触れてしまったような気がしました。

企業としての、将来への投資や、一般の方への影響力の部分で、ひとつのありかたを見せてもらったような気がしてとても考えさせられました。

 

また、今回の研修旅行では、妻籠にも初めて訪れました。

江戸時代の雰囲気を現代に伝え、重要伝統的建造物群保存地区として指定された最初の地区だということは事前の知識としてありました。

また、同地区内では、往時の建物について「売らない、貸さない、こわさない」という三原則を住民の方が守っておられるというのもテレビで見たことがありました。

その結果、とてもゆかしい街並みではありましたが、活用されないまま、素朴なかかしを飾っているだけの家もあり、観光客の食べ歩き欲を満たすような安易な観光地化は拒んでいます。

 

建物所有者に対して建物を守るための経済的負担のみならず、生業の自由を奪うという負担を強いているのではないかと感じました。

 

妻籠内の蕎麦屋で「すんきそば」という、お漬物のすんきが具になったお蕎麦をいただきました。

お漬物の酸味がお汁に染み出して、とても深い飽きのこない味わいで、お汁もすべて飲み干し、蕎麦に添えてあった自家製の胡瓜の醤油漬も歯ざわりが最高です。建物所有者の方は、建物だけでなく漬物文化の伝統もまた守っておられるのかと感心させられました。

また、余談ながら、妻籠内の店内のクーラーの設定温度もとっても控え目で、ガンガンに冷やす関西とは大違い。

伝統を守る功績と負担の重さがともに胸に迫りました。

経営のヒントとして、鑑定士としての各地方の地域性の視察として、有意義な旅行となりました。

 

(文責:長谷川 由紀)

 

>不動産鑑定のご相談

>不動産相続のご相談

>借地・底地のご相談

 

西宮・芦屋・神戸・尼崎・宝塚・伊丹・大阪
小林エステイトでは不動産のご相談は初回無料で承っております。お気軽にお問い合わせください。