目に見えること、自分でわかることだけで決めてしまうと失敗することがあります。
不動産も、地面から上の世界は見ることができますが、実は、地中には、あまり知られていない、減価要因があります。
自宅を購入した方が、そのことで悩みをかかえてしまい相談に来られたことがありました。趣味は、ガーデニング。自分の庭を持つことが夢だった相談者が購入した自宅は、庭付きの新築戸建住宅でした。
場所も良いし、趣味のガーデニングもできるということで、資金の準備も目途がついたところで、売買契約を行い、引渡しを受け、入居を始めました。
ところが、住み始めてから、この土地は、縄文時代の集落があったという「周知の埋蔵文化財包蔵地」に該当していることに気づき、相談者さんは「お墓の上に住んでるということですよね?!ガーデニングするのに庭を掘っちゃって大丈夫なんでしょうか?!」と涙目です。
我々が市役所の文化財保護課に話を聞きにいくと、たしかに集落の一部はお墓としても使われていたとのことではありました。とはいえ、お墓といってもはるか太古の話・・・。「周知の埋蔵文化財包蔵地」に該当することの減価をどのように把握すれば良いものでしょうか。
私達が生活している土地の下には、昔、人が住んでいたことがわかる遺物が出てくる場合があります。これら遺物は、国の財産であり、社会の歴史を研究するための貴重な手がかりになると考えられております。
そのため、過去に陶片や農耕器具の破片、お城の擁壁を切り出した場所などを中心に、周知の埋蔵文化財包蔵地が指定され、そのような地域の中で、建物の新築をする場合には、市町村などの地方自治体が、遺物が出土されるかもしれないということで発掘調査を行うことがあります。
そして商業用途として利用する場合は、本発掘調査費が自己負担となります。
マイホームに入居した後に、「埋蔵文化財包蔵地」であることに気づいた相談者は、気兼ねなくガーデニングできると思っていたので、ひどく落ち込み、家を売った不動産屋に、話を聞いていないと迫ったものの、不動産屋は事前に説明したと言い張り、埒があきません。
相談者さんが契約時に交付された重要事項説明書には「文化財保護法」に印がついてはいたけれど、担当者からの特段の詳しい説明はなかったとのことで、両者の主張は平行線でした。
最終的には、不動産屋が折れて、損害を被った金額を、相談者に支払うことになりました。
相談を受けた弊社は、埋蔵文化財包蔵地の所有者の義務として、将来もし商業用途に転換した場合に、本発掘調査が自己負担となることに着目し、本発掘調査のためには、どのような作業をどれくらいの人間が、どのような機械を使って行うのか市役所で丁寧に聞き取りました。
そして、所有者が本発掘調査のために支払う金額を損害額とした意見書を相談者に提出しました。不動産屋さんは、相談者から提出されたこの意見書をもとに損害額を支払ってようやく一件落着となりました。
(文責:長谷川大輔)
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